18歳で東京に出てきた春、はじめてデートをした人が連れて行ってくれたカレー屋がある。ビーフカレーが有名で、アボカドと卵黄をトッピングすると美味しい。

ボリュームもあって、値段は安くないけど満足感のあるお店だった。その人とはその後、ミシェル・ゴンドリーの映画を観に行って、感想を言い合ったのだけど、それぞれ全然違った。

キスはしたけど、その後はなんとなく連絡が途絶えた。

でも、そのカレー屋は気に入ったので、よく行くようになった。メキシカンみたいな料理も出していて、アボカドタコライスがとても美味しい。何度かデートのときにも行った。でも、その店に一緒に行った人とはだいたい上手くいかずに終わるか、良いお友達になってしまった。

彼をその店に誘ったのは確か初めてのデートのとき、フランスの映画「アデル・ブルーは熱い色」を観た後だった。迷ったらその店に行く、デートコースみたいなものだったから。でも、彼は「ああ、あそこね、学生のときバイトしてたんだけど、店長と気が合わなくてすぐ辞めちゃったの。

昼はすごく混むし…。それ以来気まずくて行けないんだよね。」と答えた。

それで別の店に行った。

次のデートで代々木公園のプライド・パレードを見物に行き、その次は鎌倉へ行った。そしていまも週末にいろんなところへ彼と出かける。でも、あのカレー屋には行かない。