ニューユタカ #007「ローカル暮らし」
2016年1月25日(月)
TEXT / 藤原 亮 / フジロッ久(仮)
あけましておめでとうございます! 1月も後半、正月の話なんぞもう犬も喰わねえよってな調子のド平日ですが、みなさま年末年始はどうされましたか? わたくしは年をまたいで山形、庄内地方に行ってまいりました。便利な東京で生まれ育ち、いつもの場所でたくさん寝るのが大好きなので、誰かに手を引かれない限り旅行しない人生を送ってきました。ラッキー! そのまま東京にいるつもりでしたが、バンドって結構あちこちライブしに行くもんでして。ライブじゃなきゃ行かない名前しか知らなかった場所が、今では心休まりバイブス高まる大好きな場所になっていたりします。しかもそれが日本にいくつもあります。それは英語なら town くらいの、city とはとても呼べないようなくらいのエリア。そこで行われる何かを「ローカル◯◯」と呼ぶのかなと思ってます。
ローカル。この言葉を初めて耳にしたのは「ローカル番組」だったと思います。この県の、この地域の人だけが見れる番組。「水曜どうでしょう、北海道ローカルだからこそゆるくていいよね」とかって。ぼくなりにローカルを訳すなら「地域密着」って感じでしょうか。
で、そんな家から何百キロ離れたローカルに、自分とバイブレーションの合う人たちがぽつぽつと暮らしているというのは、嬉しいことです。心強い。頼もしい。あくまで自分は彼らが一堂に会してお祭りをするときにライブをしに行くだけで、そこで暮らしたわけじゃないのでいいとこしか見ていないことは間違いないですが、後日そこに音の出るモノ何の一つも持たずに遊びに行くのは格別の楽しさで。
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山形の庄内には、農家の 佐藤 優人くんという友達がおり、彼に世話になる形で年末年始を田舎でのんびり。友達と蕎麦。温泉。紅白歌合戦とガキ使の反復横とび。初詣。雑煮に芋煮に寝正月。ああなんて最高。寝ちゃうぞボケちゃうぞマイナスイオン吸っちゃうぞー。なんてイメージで 12/30 夜上野駅前発山形行きのバスのチケットをとりました。
ところが、事前のプラン立てやりとりの中で佐藤が言いました。「年越しはカレー屋になるかもです」と。カレー屋? わたしは「カレー? なにそれ!年越しカレー! 新しいね〜おもしろいかもね〜」と、確実に戸惑いを伝えます。
そして彼から送られてきた「これがいちばんわかりやすいかもしれません!」というURL。それは、庄内は酒田市にて孤軍奮闘 hope というライブハウスを運営しているケンタという男のブログでした。
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農家の 佐藤 優人くん
ー 最近近所にインド・ネパール系のカレー屋が出来た。とても嬉しい。そしてとてもおいしい。
しかしそこはこのクソ田舎。海外移住系のカレー屋が出来ては、いつの間にか消えている。最終的にナン食い放題の進化系として、アイス食べ放題の提供から、いつの間にか居酒屋に変わっていたのを発見した時。それは本当に悲しかった
同じ過ちは繰り返したくない。だから仲間で誓いを立て最近よく通っている。近所のカレー屋はとても接客がいい。いつも最高の笑顔で「ダァーザァー(どうぞ)♪ 」と席に案内してくれる。「わーいでかいナンだー!」ってナンを写真に撮ろうとしたら、「ワタシがトリマスヨー ♪ 」と謎にナンを中央に嫁と二人で記念写真をとってもらったことがある。。結構ですとは言えずに、久々に夫婦で写真を撮影した。ナンとともに。愛おしい。。
ほう。。
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ー 店が空いてる時に、カレーを食べていると、遠くで視線を感じる。厨房で、おいしいかい?って感じで二人のシェフに真っ直ぐに見守られている。本当にその全てが愛おしいな。。
仲間内のそれぞれのグループで、別々に店を訪れそれぞれが常連になる。そしていつの日か、その全グループが同時に店を訪れる。そして「ミナサン、シリアイザァッタノデスカー♪ 」と喜ぶ店員の笑顔と満席の店内が見たい。年末かな? そう考えている。
そう来たか。しかし年末に思い入れの深い彼らが集うのはいいとして、俺はこの集まりを遠慮して自分なりにダラダラ年越ししてもいいんじゃない?
ー なんで仮にもライブハウスの代表がこんな話をしているかというと、ローカルとはまさにそういうことだと思うから。自分の好きな場所は、自分たちで守らなければいけない。過ちを繰り返してはいけない。カレー屋やるために海を越えてきた人たちに、アイス食べ放題をさせてはいけない。その場所の楽しみ方を見つけるのは自分次第だ。
近所のカレー屋は発見に満ち溢れている。俺はいつか自分たちの手でこの店をいつでも満席にしたい。そして好きな奴らとここでカレーを食べながら音楽の話や、馬鹿話をしたい。みんなにもそんなふうに hope で、ローカルのライブハウスで遊んで欲しい。自分次第だ。人任せではいけない。誰よりも俺らがカレーを食べなければいけない。ポイントカードはたまらない。
そう思います。
●
くおおおおおおおお。わたしは感動した。
だって、この文の書き始めは
ー 俺はカレーが好きだ。そして hope はライブ以外でも楽しいとこだ。好きな場所では楽しい時間を過ごしたい。工夫している。
で、最後はこう締め括られる。
hope はライブハウスです。
アンモー。
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「好きな場所では楽しい時間を過ごしたい。」「工夫している。」
その工夫、俺も乗っかります!
そしてわたしは知ってる人知らない人総勢30人くらいといっしょに4時間半飲み食い放題のカレーをラッシーをタンドリーチキンを腹いっぱいに詰め込み、眠りこけたり紅白見たりしながらわちゃわちゃと年を越したのでした。ケンタは勝手に作ってきたその店のバッヂを参加者とお店の人に配った。
アンモー / anmol:インドで「プライスレス」の意味。
アンモー。
声がかからなかったら一生来ることなかったろうという土地。そこで暮らす人たち。それはたかだか顔が見える数十人とか。彼らに紹介されて行くメシ屋、服屋、ライブハウス。そこで働くひとたち。人が人を呼んで、ぼくもヘラヘラと混ぜてもらいハッピーのお裾分けに預かる。ぼくは自分の寝床のある街よりも「知ってる人がやってる / 働いてる店が多い」街がいくつかある。庄内もそう。
ずっとそこに住んでる人からしたら、休みの日には巨大ショッピングモールに行くしかない生活が楽しいわけがなく、高校卒業したら出て行って、もう帰ってこない。人が集まらないローカルで暮らし、ライブハウスをやる、カレー屋をやる。東京にずっと居て、子供ができて実家の長崎に帰り、長崎でかっこいい服を作り通販で売り続けている先輩の山下陽光さんも、ぶっちゃけ長崎なんか退屈だ、と書いていた。
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どこにいても良し悪しはある。けれど、ローカルは、東京よりも、左右されずにしっかりライフスタイルを確立した人たちがのびのび暮らしているように見える。僕には。そりゃあ都会でも、しっかりとイメージを持てば自分のライフスタイルを確立することはできるけれど、ぼくはこういうローカルを体感することで東京を違う目線で見直すことができて、はじめて「都会的」に絡め取られない東京の暮らし方があるかもしれない、と思えた。それは東京にもローカルを感じることができたということだと思う。自分が絡まっていた「都会的」を、ほどいてもらった瞬間に、どのチャンネルにもそこに自分の知りたい「生きた」ものがなかったからか! と気付いた。
そもそも都会に生きる人のほうが圧倒的な少数で、なのにすべての大きな決定は都会で行われていく。中央=都会、という言葉のイメージとか、道路の「上り」「下り」という表現とか。チャンネルをどこに回しても同じだなという感覚があったとしても、なんのヒントもなくチャンネルをまわす以外のことに着手するのはとてもハードルが高い。あらかじめ誰かから伝えてもらうか事故のようにしてぶつからない限りは「どのチャンネルを選ぶか」をセンス良く考えることに始終してしまう。
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モノを作ると、それを介してちがう場所に行けて、自分のと違う暮らしのことが知れるから、とてもいい。
たとえば、バンドをはじめたときに、東京にいつまでいるのか? 東京的とどう対峙するのか? なんてことまで考えることになるとは思ってませんでした。
今、ぼくは東京にいながら、あちこちを行き来している。
日当たり良好。工夫してこー。
くらしの葛藤は続きます。
てな調子でニューユタカ!
本年も、よろしくお願いします!
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藤原 亮 / Ryo Fujiwara
ギターを弾いて歌うひと
TAG : ニューユタカ , Ryo Fujiwara , こらむ
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