

でいずのだいずができるまで その2
おいしいだいずをつくりましょう
#011 / 神奈川県南足柄市
TEXT & PHOTO / JUNYA KATO(DAYZ.編集長)
DAYZ. の「だいず」づくりの記念すべき1回目の「蒔く」が、2016年5月29日(日)に開催されます。天気予報は現時点では晴れのちくもり。山の天気は変わりやすいというけれど、きっと晴れるような気がする。もし急な雨が降っても、それはそれで自然の中ならきっと楽しめます。東京に降る雨とちがって、山に降る雨はとてもきれいです。水滴をまとった植物のみずみずしさは目をみはるものがあります。ちょうどよく一瞬だけ降ってまた晴れるようなことがあれば、水滴が太陽の光に反射して、もっときれいな景色が観れるかもしれません。何度か南足柄市に訪れてみて、晴れの日もあれば、雨の日もありました。雨の日の思い出も素敵です。だから、雨で残念という風に思うのではなく、雨でよかった、と思ってもらえるといいなあと思います。晴れてよし、雨でもよしという気持ちで、ぜひお越しください。
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新宿から車で出発して、きっと海老名SAのあたりで小さな渋滞にぶつかります。なので、1時間半くらいでしょうか。オススメの景色は、高速道路から降りて、南足柄の市街地を抜け、畑までの道路へさしかかったあたり。つまり後半15分くらいでしょうか。ゆるやかな坂道を登っていく車の横に、段々畑や、田んぼが徐々に徐々に並んでいきます。田舎に住んだことはないけれど、なんだか懐かしい気持ちになれるような、そんな里山の風景です。そのまま走っていると、急に「高いところに来てしまった」と感じる瞬間があります。景色がすとーんと抜けて、晴れた日だと空にジャンプしたかのような気分になります。そこでいつもドキッとするんです。民家もだんだん少なくなっていきます。近くにコンビニもスーパーもありませんから、お水やおやつなど、必要なものはあらかじめ東京から持ってきてください。
あたりまえにせずに
ひとつひとつ感じていく
日本人の食文化に欠かせない「しょうゆ」「みそ」「とうふ」「なっとう」。口にしない日はないというくらいですが、その原料の「だいず」が果たしてどこからどういう風にきているものなのか。そこまで想像したことはありませんでした。「だいず」という存在は知っていても、じゃあその大豆がどうして「しょうゆ」になるのか、「みそ」になるのか「とうふ」なのか。なっとうは見るからに「だいず」だよね、と言っても、なっとうを食べて、だいずの良し悪しを語る人はあまりいないように思います。
この DAYZ. を通じて、少しずつではあるけれど、だいずや、だいずと関わる人たちと触れ合って、当たり前のような話かもしれないけれど、だいずにだってそれぞれブランドがあって、ちゃんと味の違いがあって、それぞれに作り手の想いや物語があるんだと気付きました。当たり前かもしれないけれど、当たり前にしたくない。
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おいしいとたのしくて
たのしいとおいしい
こんなにおいしいとうふ、食べたことない。こんなおいしいみそ汁、飲んだことない。しょうゆってこんなにたくさん種類があるんだ、とか。なっとう嫌いだったひとがなっとうを好きになったり、そのなっとうがただただ単純においしいなっとうだったり。自分たちで植えただいずの、みんなで食べた枝豆が人生で食べたどんな枝豆よりもおいしかったり。だから、動機はとてもシンプルで、
おいしいとたのしくて、たのしいとおいしい。
農業体験がくわわると「がんばったらがんばっただけおいしくてたのしい」。おいしければそれでいいのかと言われると、もしかしたら、おいしければそれだけでいいのかもしれません。ただ、そのおいしいは、ここに来た人にしか体験できない特別なおいしさです。高いお金を払っても、ほかの場所でも、ほかのひととでもダメなんです。
香りのいい秘伝豆と
甘さの効いたでいずのだいず
さて、肝心の種です。南足柄に蒔く「だいず」はどんな「だいず」がいいかなときっと悩むと思ったんですが、すぐに決まりました。まず1つは、おととし DAYZ. で蒔いた「だいず」です。「全部持ってかれた」と前に言いましたが、収穫の時に農家さんが「好きに使いなよ」と、記念に少しだけ持たせてくれたものが残っていたので、それを蒔いてみようかと思います。2年前のものなので、発芽するかが心配ですが、それは一か八かです。仮に「でいず」と名付けましょう。甘くて上品な香りが特長です。
次に、「秘伝豆」です。山形県で多く引き継がれる伝統的な「在来種(←古くから受け継がれてるドメスティックブランドといったところ)」。「秘伝」という言葉が、南足柄で語られる金太郎や天狗の伝説にとてもよく似合うなあと思ったのと、秘伝豆は「青大豆」という種類で、枝豆で食べると本当においしいだいずです。お楽しみに。
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完成しただいずで
おいしいとうふづくりを
畑の準備も兼ねて、ペンションまつがにみんなで泊まりに行った時、秘伝豆で作った手作りのおとうふを鈴木さんにその場で食べていただきました。「こんなにおいしいとうふは食べたことがない」と言っていただき、じっくりゆっくり、青大豆特有の深い香りを楽しんでいただけました。みんなの試食会の際に「もう少し甘みがあっても?」という意見が出たので、タチナガハという甘さのあるだいずも一緒に蒔くことにしました。ちなみに、今回蒔く秘伝豆とタチナガハは、DAYZ.でもインタビューさせていただいたことのある、山形の萩原農園さんのだいずです。こうして関わりが持てて、とっても嬉しい。
収穫しただいずは、農業体験に参加するしない関わらず、いつかみんなに味わってほしい。だから、収穫したあと、そのだいずを使って「とうふづくり」のワークショップも行います。手作りのおいしさ、感じてほしいです。
おいしいだいずが
できますように
みんなが農業を通じて楽しめる場を提供したいと言ってくれたペンションまつがの鈴木さん。都内からいろいろなひとたちが自分のふるさとに来て、楽しんで帰ってくれるならばとっても嬉しいとおっしゃってくれました。楽しませてみせましょうと。
実は南足柄という町も、抱える問題はだいずに似ていて、魅力はたくさんあるけれど、住んでいると当たり前になってしまってその魅力に気付けなかったり、それで若い人が減ったり、林業や農業では後継者問題を抱えています。
でも、少しでも若い人たちが外から南足柄に来てくれて、その魅力に気づいてくれたならば、それを発信してくれるならば、もしかしたら、南足柄の未来も、ちょっとだけ明るいかもしれない。そう思ってくれるひとがいます。
普段なかなか都会に住んでいると体験できない農業を、南足柄というところで、出会いを通じて、そこに暮らす「ひと」たちの気持ちで体験させてもらえる。わからないけどやってみようよ、もし実ったら嬉しいでしょう、って、鈴木さんが一番たのしそうで、それだけでぼくらはすごく楽しみなんです。
そこに蒔いた種が、いったいどんな風な味の「だいず」になるかはわからないけれど、きっと、種まき、除草、枝豆、だいずの収穫、試食、この一連の体験は、おいしい「体験」であることは間違いなくて、極端な話、ひとつも実をつけずに終わっても、きっとみんな「よかった」って思えるような関係を作りたいし、また来年、再来年へと続く活動にしていきたいと思っています。
5月29日、参加するひとも、惜しくも参加できない方も、このプロジェクトをどうぞよろしくお願いします。
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DAYZ.のだいずづくり
「蒔く」1日の流れ
ー 蒔く DAYZ.
2016年5月29日(日)雨天の場合 6月5日
時間:08:00 〜 19:00(実施は10:00〜17:30)
場所:神奈川県南足柄市矢倉沢625(北小田原病院の横の畑です)
08:00 新宿駅付近集合(詳細は個別に連絡します)
08:15 新宿駅出発(トイレを済ませておいてください)
10:00 矢倉澤公民館到着&移動
10:15 畑の周辺で自由時間
11:00 種まき
12:00 ペンションまつがへ移動
12:15 昼休憩 〜 里山さんぽ
13:00 バーベキュースタート
16:00 みんなでお片付け
16:30 おみやげ屋さんへ移動
17:00 おみやげタイム
17:30 南足柄出発
19:00 新宿駅周辺へ到着&解散
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